ダモンとピュティアス

レベル1(初級)


ダモンとピュティアス

むかしむかし、ギリシャにシラクサというまちがありました。 そのまちおうさまがいました。 名前なまえはディオニュシオスでした。 やさしいおうさまではありませんでした。 たくさんのひとおうさまをこわがっていました。 おうさまはだれもしんじませんでした。 ひとびとが自分じぶんをきずつけるとおもっていました。

おなまちに、二人ふたりわかおとこひとがいました。 名前なまえはダモンとピュティアスでした。 二人ふたりはとてもなかのよいともだちでした。 おたがいをしんじていました。 正直しょうじきさとやさしさを大切たいせつにしていました。 まちひとたちは二人ふたりきでした。

あるおうさまはピュティアスが自分じぶん悪口わるぐちったときました。 おうさまはおこりました。 ピュティアスを宮殿きゅうでんによびました。

「わたしのことをわるったのか」とおうさまはきました。

ピュティアスは正直しょうじきでした。 「はい、いました。おうさまはもっとただしく、もっとやさしくなるべきだといました」といました。

おうさまはとてもおこりました。 「おまえはななければならない」といました。

ピュティアスはきませんでした。 さけびませんでした。 おちついていました。

おうさま」といました。 「もう一度いちど家族かぞくいたいです。さようならをいたいです。数日すうじつください。かならずもどります。」

おうさまはわらいました。 「わたしがばかだとおもうのか。かせたら、にげるだろう。」

ダモンがまえました。 「わたしがここにのこります。ピュティアスがもどらなければ、わたしをころしてください。」

おうさまはおどろきました。 「ともだちのためにぬのか。」

「はい」とダモンはいました。 「わたしはかれしんじています。」

おうさまはふしぎにおもいました。 でも、ゆるしました。 「よろしい。ピュティアスはってよい。三日みっかかえらなければ、ダモンがぬ。」

ピュティアスはいえかえりました。 家族かぞくいました。 おうさまの命令めいれいはなしました。 家族かぞくはとてもかなしみました。 かえってほしくありませんでした。 いて、とまってほしいといました。

でも、ピュティアスはいました。 「ダモンがっています。わたしをしんじています。もどらなければなりません。」

三日目みっかめおおくのひと宮殿きゅうでんました。 なにこるかたかったのです。 ダモンはしずかにっていました。 こわくありませんでした。

おうさまはいました。 「ともだちはかえらない。おまえはぬ。」

でもダモンはいました。 「かれます。わたしはっています。」

時間じかんがすぎました。 太陽たいようたかくなりました。 くもがました。 かぜつよくふきました。 でも、ピュティアスはませんでした。

おうさまはいました。 「ほら、にげた。」

ダモンはなにいませんでした。 ともだちをしんじていました。

さいごのとき、おうさまがダモンをころすようにったとき、一人ひとりおとこひと宮殿きゅうでんはしってきました。 ふくはよごれていました。 かおはつかれていました。

ピュティアスでした。

「ここです!」とさけびました。 「おくれてすみません。みちわるかったです。あらしがありました。でも、もどると約束やくそくしました。」

ダモンはほほえみました。 「るとわかっていました。」

おうさまは二人ふたりました。 ながいあいだ、なにいませんでした。

「こんな友情ゆうじょうたことがない」といました。 「おたがいのためにぬことができる。これは本当ほんとう忠実ちゅうじつさだ。」

おうさまははずかしくなりました。 「二人ふたりともころさない。自由じゆうだ。」

ダモンとピュティアスはおうさまにおれいいました。 いっしょに宮殿きゅうでんました。

そのから、ひとびとはこのはなしをしました。 「本当ほんとう友情ゆうじょうつよい。本当ほんとうともだちは約束やくそくまもる」といました。

そしておうさまは大切たいせつなことをまなびました。 しんじるこころ忠実ちゅうじつさは、こわさよりつよいのです。

レベル2 (中級)


ダモンとピュティアス

むかし、ギリシャのシラクサというまちに、ディオニュシオスというおうがいました。かれおおきなちからっていましたが、人々ひとびとからあいされてはいませんでした。だれかが自分じぶんちからをうばおうとするのではないかといつもおそれていたので、だれもしんじませんでした。そのため、きびしい法律ほうりつおもばつくにおさめていました。おおくの市民しみんおうにしたがっていましたが、こころから尊敬そんけいしてはいませんでした。

そのころ、シラクサには二人ふたり若者わかものんでいました。名前なまえはダモンとピュティアスでした。二人ふたりはただのともだちではなく、つよいきずなでむすばれていました。真実しんじつ正義せいぎ忠実ちゅうじつさについておなかんがえをっていました。そして、よいおうとは、公平こうへいで、人々ひとびと大切たいせつにするひとであるべきだとしんじていました。

あるおうはピュティアスが人々ひとびとまえ自分じぶん批判ひはんしたときました。おうられようとするひとたちが、そのはなしおうつたえたのです。ピュティアスは、おう知恵ちえではなくおそれによってくにおさめているとった、とつたえました。それをいたディオニュシオスははげしくいかり、すぐに兵士へいしめいじてピュティアスをらえ、宮殿きゅうでんれてさせました。

おうまえったとき、ピュティアスは自分じぶん言葉ことば否定ひていしませんでした。

「わたしを批判ひはんしたのは本当ほんとうか」とおうはきびしくいかけました。

「はい、本当ほんとうです」とピュティアスはいてこたえました。「おうおそれではなく、公平こうへいさによって尊敬そんけいるべきだとおもいます。」

おうかおいかりでくらくなりました。

「わたしをさばくとは何事なにごとだ。このつみのために、おまえは死刑しけいだ。」

死刑しけいいても、ピュティアスはいのちごいをしませんでした。そのわりに、ひとつねがいをしました。

おうさま、まえ三日間みっかかんだけいえかえらせてください。家族かぞくのことを整理せいりし、わかれをいたいのです。かならず約束やくそくもどります。」

おうつめたくわらいました。

ぬためにもどるとでもおもうのか。まちたら、そのままえるだろう。」

そのとき、ダモンがまえすすました。

「わたしが人質ひとじちになります」と力強ちからづよいました。「ピュティアスが期限きげんまでにもどらなければ、わたしをわりに処刑しょけいしてください。」

宮殿きゅうでんはしんとしずまりかえりました。おうしんじられないというかおでダモンをつめました。

とものためにいのちをかけるというのか。」

「はい」とダモンはためらわずにこたえました。「わたしはかれ完全かんぜんしんじています。」

おう興味きょうみちました。二人ふたりあいだにこれほどつよ信頼しんらいがあるのをたことがなかったのです。すこかんがえたあとおう許可きょかしました。

「よろしい。三日間みっかかんだ。三日目みっかめ日没にちぼつまでにもどらなければ、ダモンがわりにぬ。」

ピュティアスはいそいでいえかえり、家族かぞくにすべてをはなしました。家族かぞくおおきな衝撃しょうげきけ、もどらないでほしいとたのみました。おう信用しんようできないといました。しかし、ピュティアスはくびよこりました。

約束やくそくやぶれば、ダモンがわたしのわりにぬ。とも裏切うらぎるくらいなら、えらびます。」

三日目みっかめになると、広場ひろばには大勢おおぜいひとあつまりました。人々ひとびと小声こごえはないました。ピュティアスはげたのではないかとひともいれば、もどってくることをねがひともいました。

ダモンは処刑台しょけいだいのそばにち、いていました。いのち危険きけんがあっても、おそれはせませんでした。おうはその様子ようすをじっとていました。

「おまえはおろかだ」とおういました。「とも自分じぶんだけたすかったのだ。」

ダモンはしずかにこたえました。

かれます。」

時間じかんはゆっくりぎていきました。太陽たいようがしずみはじめ、そらにはくろくもひろがりました。つよかぜまちをふきぬけました。それでもピュティアスはあらわれませんでした。おう処刑しょけい準備じゅんびめいじました。

ちょうどけいおこなおうとしたそのとき、ひとごみのなかからさけごえがりました。ふくやぶれ、ほこりにまみれたおとこはしってきました。いきあらく、からだきずついていました。

ピュティアスでした。

「ここにいます!」とかれさけびました。「途中とちゅう盗賊とうぞくにおそわれ、さらにあらし足止あしどめされました。でも、約束やくそくまもるためにもどってきました。ともすてることはできません。」

ダモンはほっとした笑顔えがおせました。

「あなたが約束やくそくまもるとしんじていました。」

人々ひとびとおどろきのこえげました。ディオニュシオスは二人ふたりつめました。そして、ながあいだかんじたことのなかった感情かんじょう――ずかしさをおぼえました。

「おまえたちは、おたがいのために覚悟かくごがあった」とおうはゆっくりいました。「わたしは一生いっしょうおそれによってくにおさめてきた。しかし、おまえたちは忠実ちゅうじつさのちからしめしてくれた。」

しばらく沈黙ちんもくしたあとおうつづけました。

「このような友情ゆうじょうをこわすことはできない。二人ふたりとも自由じゆうだ。」

人々ひとびと歓声かんせいげました。ダモンとピュティアスはい、信頼しんらい証明しょうめいされたことをよろこびました。

そのから、二人ふたり物語ものがたりはギリシャじゅうひろまりました。それは、真実しんじつ友情ゆうじょうと、直面ちょくめんしても約束やくそくまも勇気ゆうき象徴しょうちょうとなったのです。

レベル3 (上級)


ダモンとピュティアス

古代こだいギリシャ、強大きょうだい都市としシラクサには、ディオニュシオスというおう君臨くんりんしていた。かれ莫大ばくだいとみ権力けんりょくにしていたが、その内面ないめんつねおそれに支配しはいされていた。あらゆるところに裏切うらぎりの気配けはいかんり、忠実ちゅうじつ市民しみんでさえ危険きけん存在そんざいおもえた。支配しはいうしなうことをおそれるあまり、厳格げんかく法律ほうりつ過酷かこく処罰しょばつによってくに統治とうちしていたのである。都市とし繁栄はんえいしていたが、そこに信頼しんらい存在そんざいしなかった。

そのシラクサの市民しみんなかに、ダモンとピュティアスという二人ふたり若者わかものがいた。かれらはおおくの人々ひとびと称賛しょうさんされながらも、しん理解りかいされることのすくないふか友情ゆうじょうむすばれていた。その忠誠心ちゅうせいしんは、ともまなび、おな信念しんねんいだなかはぐくまれたものであった。かれらは快適かいてきさよりも真実しんじつを、安全あんぜんよりも正義せいぎおもんじた。かれらにとって友情ゆうじょうとはたんなる交友関係こうゆうかんけいではなく、道徳的どうとくてきちかいであった。

ある午後ごごおおやけ議論ぎろんで、ピュティアスは率直そっちょく統治とうちについてかたった。おそれに依存いぞんする支配者しはいしゃは、かえってみずからのたみ弱体化じゃくたいかさせると主張しゅちょうしたのである。その発言はつげんはすぐにディオニュシオスのみみとどいた。地位ちいまもろうとする側近そっきんたちははなし誇張こちょうし、ピュティアスが反乱はんらんをあおっているとうったえた。

おう激怒げきどし、ただちにピュティアスを逮捕たいほし、宮殿きゅうでん連行れんこうするようめいじた。

壮麗そうれい宮殿きゅうでん広間ひろまったときも、ピュティアスはふるえることはなかった。ディオニュシオスはするど口調くちょういただした。

統治とうち批判ひはんしたのか。」

わたし正直しょうじきかたったまでです」とピュティアスはこたえた。「支配者しはいしゃ忠誠ちゅうせいいるのではなく、みずからそれをすべきだとかんがえます。」

その大胆だいたんさに廷臣ていしんたちはいきをのんだ。おうはそのきを反抗はんこうった。

「そのつみにより、死刑しけい宣告せんこくする。」

判決はんけつくつがえらないものであったが、ピュティアスはみださなかった。しばらく沈黙ちんもくしたあとねがた。

まえ三日間みっかかんだけ帰郷ききょうをおゆるしください。家族かぞくのことをととのえ、わかれをげねばなりません。かならず指定していされた時刻じこくもどるとちかいます。」

ディオニュシオスは苦々にがにがしくわらった。

もどものしんじよというのか。自由じゆうになれば、そのまま姿すがたすだろう。」

そのとき、ダモンがまえすすた。

わたし保証人ほしょうにんとなります。ピュティアスがもどらなければ、わりにわたし処刑しょけいしてください。」

広間ひろまにはどよめきがひろがった。おうはダモンをじっとつめた。

「ただ信頼しんらいのみを根拠こんきょいのちすというのか。」

「はい」とダモンはるぎなくこたえた。「かれ言葉ことばくさりよりもつよい。」

おうはそのおろかともおもえる献身けんしんなか興味きょうみおぼえ、提案ていあんれた。

「よかろう。三日みっかだ。三日目みっかめ日没にちぼつまでにもどらなければ、おまえがぬ。」

ピュティアスはすぐに出立しゅったつし、城外じょうがいいえいそいだ。事情じじょういた家族かぞくふかかなしみにつつまれ、げるよう懇願こんがんした。

「だれもあなたをめはしない。おう不正ふせいだ。」

しかしピュティアスはくびった。

もどらなければ、ダモンがわたし臆病おくびょうさの代償だいしょうはらうことになる。裏切うらぎっていのち価値かちはない。」

一方いっぽう、ダモンは監視下かんしかかれたが、れいをもってあつかわれた。おおくの市民しみんおとずれ、本当ほんとう後悔こうかいはないのかとたずねた。

うたがいはありません」とかれこたえた。「立場たちばぎゃくであれば、かれおなじことをするでしょう。」

三日目みっかめちかづくにつれ、シラクサ全体ぜんたい緊張きんちょうひろがった。処刑場しょけいじょうには群衆ぐんしゅうあつまり、あるものはピュティアスが賢明けんめいにも逃亡とうぼうしたとかんがえ、またあるもの奇跡きせき帰還きかん期待きたいした。

ディオニュシオスもまた、時間じかん経過けいか興味深きょうみぶか見守みまもっていた。恐怖きょうふ後悔こうかい表情ひょうじょう期待きたいしたが、ダモンのかおにはしずかな確信かくしんしかなかった。

やがて太陽たいようかたむき、黒雲くろくもそらおおった。はげしいあらしまちおそい、あめ石畳いしだたみち、雷鳴らいめい宮殿きゅうでんひびいた。おう処刑しょけい準備じゅんびめいじた。

ともはおまえを見捨みすてた」とつめたくげた。

ダモンはしずかにくびった。

きているなら、かっているはずです。」

まさにけい執行しっこうされようとした瞬間しゅんかん群衆ぐんしゅうはしからさけごえがった。あらしたれ、きずだらけのおとこまえへとすすた。

ピュティアスだった。

かれおうまえにひざまずいた。

途中とちゅう盗賊とうぞくおそわれ、さらにかわ氾濫はんらんしました。しかし、運命うんめいさまたげられるわけにはいきません。約束やくそくたすためにもどりました。」

群衆ぐんしゅうおどろきにつつまれた。ダモンはともこした。

うたがったことは一度いちどもない。」

ディオニュシオスはなが沈黙ちんもくののちにくちひらいた。兵士へいし忠誠ちゅうせい家臣かしん服従ふくじゅうてきたが、自由意志じゆういしによるこれほどの献身けんしんはじめてだった。かれらはおそれではなく信念しんねんによってれようとしていた。

わたし生涯しょうがいうたがいによって統治とうちしてきた。しかし、おまえたちの友情ゆうじょうちからえるつよさをしめした。理解りかいできぬものをこわすことはできぬ。」

おう衛兵えいへいめいじた。

解放かいほうせよ。二人ふたりとも処刑しょけいしない。」

安堵あんどなみ広場ひろばつつんだ。ダモンとピュティアスはい、極限きょくげん試練しれんなか信頼しんらい証明しょうめいした。

その日以来ひいらいかれらの物語ものがたりはシラクサをえてひろまった。それは誠実せいじつさと勇気ゆうき、そしておそれやさえもやぶ友情ゆうじょう象徴しょうちょうとしてかたがれることとなった。

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